第四節 心理留保
1,心理留保とは
心理留保とは、冗談やウソのように真意と異なる意思表示の事です。例えば簡単に説明すると本人A太があげるつもりもない家を相手側のB男に「私の家をあげます」と言ってしまった様な場合です。
2,効 果
問題)A太は、心裡留保によって成立した契約は守らなければならないのでしょうか。
回答)心裡留保による意思表示は、原則として有効になります(93条本文)。
但し、相手側(B男)が表意者(※意思表示をした者=A太)の言っている事を知らず(善意)、更に、知る事が出来なかった場合(無過失)に限って、相手側を保護して契約を有効としています。
つまり逆を言えば本人A太が冗談でいっている事を相手側B男が知っていた場合(=悪意)や冗談であることを知る事が出来た場合(過失有り)は、この意思表示は無効になります(93条但各書)。
3、心裡留保と第三者との関係
問題)では第三者C郎に対してはどうでしょうか?A太が相手側B男に「家をあげます」と意思表示をし、更に相手側B男が第三者C郎にその家を売却した場合どうなるでしょうか?
回答)当事者同士(A太・B男)の契約が有効な場合(つまりB男が善意無過失)、第三者C郎に売却すれば、その土地は当然C郎の物になります。
重要なのは当事者間の契約が無効の場合、つまり、相手方B男が悪意または有過失の場合です。当事者間の契約が無効なのにも関わらず、相手方B男が第三者C郎に売却した場合第三者C郎が善意の場合、第三者C郎への売却が有効となり、本人A太は無効の主張ができません。
つまり、本人A太を保護するのではなく、第三者C郎を保護するとされています。これを、民法では本人A太は第三者C郎に対抗できない(C郎から取り戻すことができない)といいます。
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